SRSV問題の解明解決を目指す


問題提起 2002/12/24

★ SRSVとは
小型球形ウイルス(SRSV)のことで、現在では、「ノロウイルス」「ノーウォーク様ウイルス」とも称されている。直径が30ナノメートルほどの微小なウイルスで、ヒトの腸内でしか増殖しない。ウイルスを含む下水処理水が海に流れ込み、牡蛎などの二枚貝で中腸線に濃縮される。腹痛や嘔吐などを発症するが、食中毒では比較的軽い。70度で約1分加熱すれば不活化でき食中毒を予防できる。( 電子顕微鏡写真

★ SRSV問題とは
広島と宮城は牡蛎の特産地であり、特に宮城県は「生牡蛎」の出荷で有名である。しかし近年、小型球形ウイルス(SRSV)の検出方法が開発され、今まで原因不明とされていた食中毒がSRSVの摂取によると一部証明された。SRSVは海水温が低下して10℃以下になると頻繁に牡蛎の体内に検出されるようになる。宮城では海水温が3℃位の、暮れから正月にかけて特に多く検出され、検出された漁場では検出されなくなるまで「生牡蛎」の出荷が停止される。そこで漁民はやむなく「加熱用」で出荷するが、同じ手間と経費で相場値が半分になるので大きな痛手である。又、SRSV中毒を出した料理店や小売店は「営業停止措置」「賠償問題」を背負うことになるので大きなリスクとなっている。浜でSRSV検査をしているのにSRSV中毒が街で出るのは、SRSV検査結果が出るのに4日かかるせいである。(それと近年問題になったラベル偽造牡蛎にもよる)
SRSVの発生源はヒトである。稲森悠平氏は「下水処理場の処理の不完全さによりSRSVが河川に放出されている。」と指摘する。SRSVは牡蛎にとって毒でもないし餌でもない。たまたま、SRSVが多く流れてきた汽水を吸いこんで体内に貯めるだけである。よって、清浄無菌海水中に牡蛎を浸漬させ、呼吸と代謝を活発にさせる( 蓄養処理−参照1 )と牡蛎はSRSVを体外に放出する。問題は清浄無菌海水を作るのは比較的容易だが、冬場の海水温3℃を10℃以上に上昇させるコストである。現在の牡蛎蓄養方式は、掛流し−プッシュアウト方式なので、加温蓄養はエネルギーを捨て続けるようなもので経済効率が悪い。さらに問題なのは現在のSRSVの検出結果が、陽性か陰性かの表示( 参照2 )であるので減数化蓄養実験ができないことである。
 * 三重県の保健所が減数化蓄養実験にトライした。( 参照3
 * 宮城県の保険環境センターがSRSV数量計測法を開発した。( 参照4
よって、SRSVの有効で確実な対処方法は稲森氏の言うとおり「出口管理」である。つまり「下水処理場よりSRSVを河川に放出させないこと」につきる。
ここで大きな問題がある。

 1. SRSVの処理方法とは何か?
 2. SRSVが処理されたことをどうやって証明するのか?

の2点である。
1については、通常の「塩素滅菌処理」「紫外線殺菌処理」「オゾン殺菌処理」等が考えられる。2についてSRSVは生物と物質の中間物のウイルスである。構造が完全に壊れて復元不能なのか又は殺菌処理により一時的に不活性化しただけなのかの判別が難しい。SRSVはヒトの腸内でしか増殖しないので、細菌のようにシャーレ培地の中で増殖させるわけにはいかないし、人体実験は当然論外である。今までのPCR法では「処理して破壊したSRSVのRNA断片を増幅して『陽性』と判断する危険性がある。
 現実的にSRSVの処理装置はもう要望されている。広島、宮城と同じく牡蛎養殖が盛んな三陸地方のある町では、町の下水処理場建設に際して「SRSV駆除機能付き」が仕様となっており、排水処理メーカーは対応に苦慮している。また紫外線殺菌装置メーカーには全国より「おたくの殺菌装置でSRSVは駆除できますか?駆除証明書は出せますか?」と問合せが頻繁にきているとの事である。

*宮城県でも牡蛎生産の盛んな「志津川湾」を持つ、志津川町では紫外線消毒を完備した「志津川浄化センター」を、2004年12月に完成させました。 従来の「下水処理水の塩素消毒」を止めて、海に流れても残留毒性のない「紫外線消毒方式」を採用して漁業資源を守る姿勢を明確にしたのです。

★ 参考文献
テキストファイル1




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更新日: 2005/5/7